[ 京都・宇治田原の茶師のこだわり ]
昭和元年創業の宇治田原製茶場三代目当主。半世紀以上に渡り、緑茶発祥の地、京都・宇治田原の茶師として、伝統を重んじつつ、新しい時代の緑茶開発へと情熱を注いでいる。
京都市街から南東におよそ15kmに位置する宇治田原は、霧が発生しやすく茶葉の栽培に適した気象条件を備えた土地です。江戸時代、八代将軍吉宗の治世に宇治田原・湯屋谷の茶農、永谷宗円が15年の歳月をかけて、茶葉に熱を加え、水分をとばしながら揉む「青製煎茶法」を開発しました。それまでになかった鮮やかな緑色のお茶を生み出したことから「緑茶発祥の地」と呼ばれています。
宗円は苦労の末に完成させたお茶の製法を、宇治田原の人々に惜しみなく伝授し、そこから日本各地に緑茶づくりが広がっていきました。今も多くの人々に愛される緑茶が誕生した場所であると同時に、多くの日本人が思い出す、美しい茶畑の風景が生まれた場所ともいえます。
- 写真上:1950年頃の宇治田原の田園風景。
- 写真右:多くの人に緑茶を広めた永谷宗円の像。
緑茶発祥の地であり、茶樹の栽培に適した名産地でもある宇治田原には、多くの先人たちの努力に培われた、お茶作りの知恵と技が息づいています。茶葉の栽培からお茶の精製の仕方まで、お茶作りのさまざまな技術は、時代を超えて、今も脈々と受け継がれています。
私は、長い歴史を持つ宇治田原のお茶屋だからこそ伝えられる、お茶の味と心があると思っています。味、香り、渋み、苦みの調和のとれた味わいの中に、一杯のお茶がもたらす心のうるおいを感じる。心に寄り添う深く豊かなお茶の味わいと高い精神性を持った茶文化を、これからも一途に追求し、後世へと伝えてゆくことが、私の使命であると感じております。